目黒通りと Bob James

Bob James をかけながら目黒通りを流す昼下がり

アコードCL9

ホンダはFFのハンドリングを極めていると思う.それを初めて深く認識したのが,コードネームCL7と呼ばれる7代目アコードだ.2002年デビューのアコードは,排気量1,998ccのCL7と2,354ccのCL9の2本立てだった.完全3ナンバーの車体サイズは,4,665mm x 1,760mm x 1,450mm で,当時としては相当大きい印象であったが,F30セダンと全長はほぼ同じである(つまり今でも結構大きい).初めてCL7セダンを運転した時の衝撃は忘れられない.まずコーナリングが気持ち良い.自分が狙ったラインに沿ってハンドルを切るだけで,測ったように車体にヨーが発生し,爽やかにコーナーをクリアしていく.とにかく怖くない.自信を持って突っ込んでいける.CL9はCL7に比べるとややフロントがベビーであるが,基本的なマナーは変わらない.FFの場合,フロントヘビーは有利な場合もある.タイヤ限界の範囲内であれば,フロント荷重に有利だからである.FRのコーナリングマナーを知った今では,コーナリングナチュラルさでは,ずば抜けて最上,とは言えなくなったが,FFの運転作法が身に染みている私に取っては,安心感はまだ上だ.アコードに比べれば,ハンドリングで定評のあったマツダアクセラスポーツは,随分とリア優勢の味付けで,コーナリングではきっかけを作るのに気を使ったものだ.当時,首都高のあるコーナーをあるスピードで曲がることを自分なりのベンチマークにしていたのだが,アクセラの場合は,ライン取り,フロント荷重のタイミングを慎重にコントロールして曲がっていたところが,アコードでは,無造作に操作しても簡単にクリアできた.CL系のアコードは,ユーロRばかりがメディアに取り上げられてはいたのだが,キレのあるエンジンと硬めのサスペンションを持つユーロRはさぞかし素晴らしいスポーツカーなのだろうと想像していたものだ.ついぞユーロRのステアリングを握る機会は無かったのだが.

CL9のエンジンは2,354ccのDOHCでVTEC機構を備えて,最大出力200psを発生する.自然吸気なので,低速トルクはそれ程でもなく,低速域では,CL9よりも低速側にトルクを振っているCL7と大差ない感じである.日本の法定速度内で運転している限り,5段ATが次々とシフトアップしていくので,レッドゾーンの7,000回転までとても回せない.よって,本当に200psもあるのか?と思えるほど大人しい.おそらく,この車の真骨頂は日本の法定速度を超えたところで発揮されるのだろう.高速域では,空力も良いため,ピタッと安定する.ストロークたっぷりの4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションによって,路面の不整のいなしも優れている.はっきり言って,高速域での安定性はF30を凌駕する.低速域で静かな車内は,高速域では結構ノイズが高まる.高速走行中はクラシック音楽は聴けない.高級車,というわけではないことを知る.静粛性はF30の方が上かな.

ホイールベースは意外と短くて,2,670mm.真横から見ると,キャビンが大きめでフロントオーバーハングが長めの,FFのプロポーションをしていることが分かる.

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CL9サイドビュー

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F30サイドビュー

ただ,CL9のこのプロポーションは,FFとして極めて真っ当で,とても本格的に作り込まれていると言える.

先日,お世話になっているディーラーで,CL9を点検で預けている最中,現行のN-WGN カスタムLターボに試乗させていただいた.その乗り味は驚くほど上質で,乗り心地良し,静粛性良し,加減速良し,と街中ではほとんど欠点らしい欠点が無かった.ただ,帰りにアコードを受け取って運転したら,やはりアコードの方が全て上だった(笑).