目黒通りと Bob James

Bob James をかけながら目黒通りを流す昼下がり

ドライビング・パフォーマンス・コントロール

ドライビング・パフォーマンス・コントロールは,「ECO PRO」「COMFORT」「SPORT」「SPORT+」を切り替えることができ,主に,アクセルレスポンス,シフトスケジュールが変わるようだ.これまであまり意識しておらず,常にデフォルトの「COMFORT」で走っていた.しかし,これが望外に素晴らしいことに気づいた.高速走行時に,「SPORT」モードを試したところ,とても気持ち良かったのである.

わがF30はMスポーツではない,デザインラインのスポーツである.かの福野礼一郎氏によれば,「スローでダルな操舵感,ぶよぶよのサス,びっくりするくらい低いロール剛性,思わずセンスを疑う前後平行ロール感」と,酷評されている足回りである.確かに,街中で低い速度で流している時は,乗り心地も良く快適だが,高機動時にボディの動きが大きい,と感じていた.それゆえ,例えば高速道路などでの安定感は今一つである(対CL9比).ただし,フラットトルクのターボエンジンのお陰で,速度コントロールの自在感は感じられ,その部分は快適だと感じていた.(ちなみに,CL9はホンダのNAエンジンらしく,高回転を保てるような超高速域になると,自在感が出てくる.)以上は,「COMFORT」モードで感じていたことである.ところが,「SPORT」モードにすると,印象が一変する.まず,速度コントロールの自在感が格段に向上する.「COMFORT」モードでも十分な自在感があったのだが,「SPORT」モードでは,回転数が上がり,レスポンスも上がるためか,より快適なのだ.特に加速.ある速度までの到達時間が決して早いわけではない(それはエンジンスペックで決まってしまう)が,その過程が,超リニアで超気持ち良い(<--なんじゃ,そりゃ).また,サスペンションやハンドルがしっかりする気がする.これなら,十分安定している,と言える.ここが不思議なところで,実際にダンパーの減衰力が変わったり,ステアリングが重くなったりしているわけではないはずなのだが,しっかり感が増す.これは,常に駆動力がかかっている,あるいは,タイヤに負荷がかかっている状態になっているからかもしれない.「COMFORT」モードでも,直線は今一つ安定感に欠けると感じても,コーナリング中は安定している.これは,常にタイヤにコーナリングフォースがかかっている状態だからであろう.これと同じことが,「SPORT」モードでは直進方向に起きているのではないか.ここでふと思い出したのが,マツダのGベクタリングコントロールである.トルクの変動をコントロールして車両を安定化する機構である.「SPORT」モードによる高速域の安定化を感じた今,マツダの考え方には大いに頷けるものがある.さて,高速道路を出て,街中に入ると「SPORT」モードはややエンジン回転が高く,快適性が削がれる.やはり「COMFORT」モードが気持ち良いのである.

つまり,「街中=COMFORT」,「高速=SPORT」とモードを切り替えることによって,どのような走行シーンでも快適に走ることができるのだ.

走行フィールなど,結局エンジンスペックで決まってしまう,と思っていたのだが,アクセルとエンジン回転の関係やシフトスケジュールでこれだけ運転感覚が変化するというのは,新鮮な発見だった.