目黒通りと Bob James

Bob James をかけながら目黒通りを流す昼下がり

ランフラットタイヤについて

F30 320i Sport line (LCI)を手に入れての走りの印象をいくつかまとめておく.

a) 動き出しが実に滑らか.アクセルをジワッと踏むと滑りだすように加速していく.これは実に気持ちが良い.

b) 静か.タウンスピードでは大変静かで,これが高級車の雰囲気か,と思った.また高速走行でも音量は高まるものの,全般的に静かで,オーディオの音もそこそこ聞こえる.同じDセグメント(?)としてはCL7(9)も町中でのゆったりとしたスピードでは十分静かなのだが,高速走行では意外とノイズが高まり,あまり静か,とは言えない印象である.

c) 加速は十分.爽快.エンジンは2Lターボ,B20B20Aという形式で,本来252psを出すB20B20Bをデチューンしたもので,最高出力184psである.それよりもトルクが270Nmあることが効いているだろう,動き出しの滑らかさから連続して滑らかにどこまでも加速していく.もっとも,床まで踏んでもびっくりするような加速にはならない.まあ,料金所ダッシュとか,公道上ではごく一部のシチュエーションでしか楽しめない爆発的な加速など,要らないといえば要らない(負け惜しみ).日本の公道では自在に速度コントロールできるパワーを持っている.それに踏み続ければ,容易に200km/hを超える速さを持っている(by youtube).

d) ボディの動きは大きい.Sport line はサスペンションが柔らかい.高機動時では路面の不正やラフな操作でのボディの動きが大きいと感じる.気持ち良く走るために,丁寧な運転操作が要求される.

e) ランニングデイライトがカッコいい.この車にして良かったと思うことの一つが,ランニングデイライトだ.購入するまで全然気にしていなかったのだが,たまたま入手したのがLCIモデルだったため,エンジンをかけるとデイライトが点灯する.独特のシルエットで,昼間でも遠目からBMWだとわかる.自分で見る機会は少ないのだが,渋滞などで前の車のバンパーなどに写っているのを目にすると,思わず顔がニヤけてしまう.

f) 路面の不正に足を取られる.路面が荒れている時,時折,すっと足をすくわれるような挙動を示す.これは気持ち悪かった.ゆえに,高速道路でも油断がならない感覚があった.

g) 制動時の挙動が変.ブレーキを浅めに踏んでゆっくり減速し,そのまま静かに止まろうとすると,ブレーキ踏力が一定なのに,あるところで急に制動力が高まり,どうしても不自然な止まり方になってしまう.ギアが1速に落ちるのだろうか.これもかなり気持ち悪く,ブレーキにはかなり気を使う.ある程度潔く止まる時にはさほど気にならないのだが.

h) 1速-->2速の変速ショックが大きかった.この車はZFの8速オートマチックトランスミッションを持っている.評判の良いミッションなのだが,静止からの発進時,1速から2速への変速ショックが明確に大きかった.

さて,ここまでで,f, g, hは,ネガティブな項目であるが,f, hは過去形で書かれている.実は,タイヤをランフラットからノーマルに変えたら,症状が無くなったのである.まず f) だが,路面の不整で足を取られるようなことは無くなった.h) についても変速ショックは見事なまでに消えた.g) の制動時の違和感は完全に消えてはいないが,かなり緩和された.

この経験から,ゴムの弾性というものがいかに大事か,ということを思い知った次第である.路面の不整もゴムの柔らかさで吸収しているのだろう.これによって,高速走行時でもかなりリラックスして運転できるようになった.ブレーキ時における急な制動力の高まりも,制動Gの変化をゴムで鈍して伝えてくることによって緩和していると考えられる.変速ショックが無くなったのは不思議なのだが,これもゴムの弾性が吸収しているに違いない.BMWの標準モデルは,ほとんどがランフラットタイヤ指定で,サスペンションもランフラット用にチューニングされている,という.従って,タイヤだけノーマルにするとサスペンションとのミスマッチが起きる,とも.しかし,ランフラットタイヤの硬いタイヤの振動をよく吸収できるサスであれば,ノーマルの振動ならなおさらO.K. という感じである.

ノーマルタイヤに変えて,良い意味で普通になった.コーナリング時のヨーの立ち上がりも,依然としてナチュラルなのであるが,これもゴムのヨレによるものか,一種のタメが生じた.これが,ヨーの発生を感じる一種のリズムを生み出す.これによってコーナリングフォースの立ち上がりがより鮮明になり,よって自信を持ってコーナーに侵入していくことができるようになった.

タイヤがいかに重要なパーツなのか,思い知った次第である.単に動力を路面に伝えるだけでなく,ドライバーへの情報伝達でも重要な働きをしているのだ.

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BMW F30 320i Sport line のこと,車の趣味のこと

ずっと気になっていたFR(フロントエンジン,リア駆動)の車を手に入れた.BMW320iセダン,モデルコードでF30と呼ばれる,すなわち先代3シリーズである.3シリーズはMスポーツが人気であるが,私のは,スポーツライン,いわば素のモデルである.運転免許を取ってから30年以上経つが,これまで乗ってきた車は全てFFだった.FRは曲がりの流儀が違うという.ワクワクしながら乗ったF30スポーツラインのファーストインプレッションは,意外と変わらないな,というものと,やはりコーナリングは異次元だな,という相反する印象を併せもったものだった.考えてみれば,現代の車である.基本的な操縦安定性は確保しているのであり,普通に運転していれば,FFであろうとFRであろうと変わらないのだろう.ただし,コーナリングの印象は一言で言うと,ナチュラル,だ.FFのコーナリングは,コーナリングの初期が一番大事だと思っている.とにかくヨーのきっかけを掴むこと.これが大切だし,難しい.ステアリングを切り始めて回転運動が感知されるまでの時間帯は祈るような気持ちだ.いったん回転運動が始まってしまえば,後はアクセルを踏んでいける.私の乏しい経験の中では,最もナチュラルなコーナリングができるFFはホンダのアコード(CL7もしくはCL9)だ.アコードについてはまたいつか語ってみたいが,ナチュラルさ,と言うことでは,F30はあっさりアコードを凌駕してしまった.実に不思議な感覚だった.ステアリングを切った際,それまでの癖で回転運動が始まるのを一瞬待ってみる.すると,待つまでも無く,すでに回転運動に入っているのだ.その先は,FFでは,ステアリング操作によるコーナリングフォースと,加速駆動によるアンダーステアとでバランスを取りながら立ち上がっていくのだが,F30の場合は,コーナリングフォースが駆動力に食われることが無い.考えてみれば,FRなのだから当たり前なのだが.(コーナリング初期における,ヨーモーメントの発生がいつの間にか起こっている感じは実はランフラットタイヤであることも大きかったことが後にわかった.この話も別の機会にしよう.)

世の中に,車好き,と言う人は多い.車の趣味は,実に様々な要因で成り立っている.私は,ドライブが好きな方だが,ブランドとかに左右されないか,と言ったらそうでも無い.例えば,今回FRセダンが欲しくでBMWを手に入れたわけだが,では,マークXやクラウンでも良かったか,と言うとそう言う訳にはいかない.BMWというブランドに惹かれた側面があることも確かだ.ただ,それで良いと思っている.世の中にある車のメーカーとその歴史,それを取り巻く多くの人々の物語,それらが色々なメディア(本や雑誌やインターネットなど)を通じて,私,といういびつな個性の中に作る嗜好性,それが車の趣味なのだ.車にまつわる色々の事をいつも考えている.それらを言葉にしてみたい,と思った.それによって,趣味が少し深まってくれると良い,と思っている.